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千葉地方裁判所 平成5年(ワ)243号 判決

原告

高柳博之

被告

株式会社タナツクス

主文

一  被告は、原告に対し、金九一万七九五六円及びこれに対する平成四年八月七日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを三分し、その一を原告の、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、一五〇万円及びこれに対する平成四年八月七日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実等

原告は、平成四年八月七日午後五時頃、千葉市美浜区高州一丁目三番地先道路上の左端を被害車両(原動機付自転車)で走行していた。そこに、訴外溝部佳光の運転する加害車両(普通貨物自動車 足立四六ら六〇六五)が不注意で左側に寄り被害車両と接触したため、原告が転倒して負傷した。そして、被告は、原告に対し、原告が右事故により被つた損害について民法七一五条による損害賠償義務を負担している。

本件は、原告が、被告に対し、右損害の賠償として、後記第三に内訳を記載するように合計一七三万八六一一円の損害を被つたと主張して、そのうち一五〇万円及びこれに対する右事故当日から支払いずみまでの民事法定利率による遅延損害金の支払いを請求している事案である。

二  争点

原告の被つた損害の有無及び数額

第三争点に対する判断

一  治療費(原告の主張額は三六六〇円)

原告は、本件事故により、右手打撲、両下肢打撲、右大腿擦過傷、左膝打撲挫傷等の傷害を負い、事故当日から少なくとも平成四年一二月二五日までの一四一日間のうちの少なくとも三一日間稲毛病院に通院して治療を受けたが、その治療費のうち被告の加入する任意保険及び前記溝部本人から支払われた合計一八万〇二六〇円のほかに、平成四年八月一〇日、三六六〇円を原告が負担して支払つたことを認めることができる(甲四、乙二の一ないし五、乙三の一ないし五、原告本人)。

二  診断書作成料(原告の主張額は一万〇三〇〇円)

原告は、診断書二通を必要とし、その作成料一万〇三〇〇円を前記病院に支払つたことを認めることができる(甲八、原告本人、弁論の全趣旨)。

三  通院費(原告の主張額は六四〇〇円)

原告は、前記病院に通院するため二回タクシーを利用して二八〇〇円を支払い、五日バスを利用して一二〇〇円程度を支払つたことを認めることができる(甲五、原告本人)。原告は、そのほかにバイクを使用して二三日通院したと主張してバイクの損料二三〇〇円を請求しているが、右損料の相当性を認めるに足りる証拠はないから、採用することができない。

四  休業損害(原告の主張額は六一万四二二一円。その内容は、原告は事故前には一日当たり一万四九八一円の収入があつたところ、平成四年八月七日から同月二一日までの間に通院日を除き休養した日が九日あり、そのほかに通院日が三二日あり通院日にも仕事ができなかつたから、以上の四一日に前記収入を掛けると六一万四二二一円になるというものである。)

1  証拠(原告本人)によれば、次の事実を認めることができる。

原告(昭和七年八月生れ)は、土地家屋調査士の資格を持つているが、本件事故当時には主として不動産業者から頼まれて地上げといわれる種類の仕事の一部を引き受けて収入を得ており、右の仕事は出歩いてする種類のものであつた。原告は、本件事故の結果、前記のように傷害を受けたが、特に右足首の内出血を含む症状がひどく、歩行に障害があつたため、医師の助言で、平成五年八月七日から同月二一日までの一五日間くらいはおおむね休養した。原告は、その後も、前記のように約四か月の間に二五回通院したが、その間は全く仕事ができなかつたわけではなく、ただ、通院する時間は仕事ができなかつた。

右の認定によると、原告は、右の前者の一五日間のうちの一四日間(八月七日は、午後五時頃に事故に遭つた日であるから、一日休業とは認め難い。)及びその後の通院二五日の二分の一である一二・五日の合計二六・五日間本件事故による傷害のため休業を余儀なくされたものと認めるのが相当である。

2  そして、証拠(原告本人)によると、原告は前記のような仕事で収入を得ており、原告の感じでは年収七〇〇万円ないし八〇〇万円はあると思つているが、原告は確定申告をしたことがなくそのほかの関係でも右収入額を証する資料は持ち合わせていないことを認めることができる。そうすると、原告の年収が右の程度にあつたことまでは認めることができないが、原告は前記のような仕事に従事しそれによる収入で生計を維持していたものであるところ、原告の主張する前記一日当たり一万四九八一円の収入は、平成二年の賃金センサスによる原告と同年齢の企業規模計、産業計、学歴計男子労働者の一日当たり平均収入額と同額であるから、原告は、少なくとも右主張額程度の年収を得ていたものと認めるのが相当である。

3  右1及び2によると、休業損害の額は、三九万六九九六円になる(一万四九八一×二六・五=三九万六九九六)。

五  慰謝料(原告の主張額は一一〇万一〇三〇円)

本件事故の態様、原告の傷害の内容程度等に照らすと、原告の被つた傷害に対する慰謝料の額は、五〇万円とするのが相当である。

六  書類取得費用(原告の主張額は三〇〇〇円)

弁論の全趣旨によれば、原告は、損害賠償請求のため被告の商業登記簿謄本及び交通事故証明書を必要とし、その費用として合計三〇〇〇円を要したことを認めることができる。

七  まとめ

以上によれば、原告の請求は主文一項記載の限度で理由がある。

(裁判官 加藤英継)

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